米Business Insiderが総合メディアInsiderと統合

(2021年2月3日)

ドイツの大手メディア企業であるアクセル・シュプリンガー傘下のInsider Inc.が運営するビジネスメディア「Business Insider」が、同社のニュースメディア「Insider」と統合されることが発表されました

この統合に合わせ、Business Insiderという名称もInsiderにリブランドされるとのことです。

ただし、一部の企画や番組、他国版は今後も変わらず「Business Insider」の名称が使われます。日本版の名称も、今まで通りBusiness Insiderのままです。

また、Business Insiderのトップページとして使用されていたURL(businessinsider.com)は、Insiderのビジネスカテゴリーとして今後も使用されます。

(Insiderの一部としてリデザインされたbusinessinsider.com)

なお、これらの変更は一度にすべて行うのではなく、段階的に行われます。

今後のビジョン

共同創業者のヘンリー・ブロジェット氏は、「Insiderは従来の万能なメディアから離れ、さまざまなフィードと記事を配信する次世代のデジタルジャーナリズムサービスへと進化します。ビジネスおよびテクノロジーのエグゼクティブ向けには、ビジネスとテクノロジーの記事が、エンターテイメントファン向けには、エンターテイメントの記事がフィードに多数掲載されます。」と述べており、Business Insiderの名称変更とInsiderへの統合は、パーソナライズ機能を備えた”新しいInsider”へ移行するための第一歩であることがうかがえます。

※この計画は頓挫し、2年9ヶ月後の2023年11月に同社はメディアの名称を「Business Insider」に戻し、URLも全てbusinessinsider.comに変更しました(Insiderブランドはこれによって消滅しました)。また、この”原点回帰”に合わせ、報道内容もテクノロジーとビジネスという得意な分野に絞ると宣言しました。

G/O MediaがLifehackerをZiff Davisに売却

2023年3月13日、LifehackerがG/O Mediaからデジタルメディア大手のZiff Davisに売却されたと、New York Timesが報じました

買収金額は非公開で、この買収によって職を失う社員はいないとの事です。米メディアのAxiosによると、社員がこの件を知ったのは、3月13日の朝との事です。

関係者の1人によると、Ziff Davisはここ数ヶ月、Mashable、PCマガジン、IGNを含む既存のメディアのポートフォリオを補完するために、同サイトの購入を求めてG/O Mediaに接触してきたといいます(Ziff Davisは、Gawker Mediaのサイトが売りに出されていたとき、その入札に興味を持ったことがあります)。

Lifehackerの編集長であるジョーダン・カルフーン氏は、3月30日に同サイト上で「Lifehackerの新しい始まりであり、改革へのチャンスでもあります」と述べています

なお、日本語版(ライフハッカー・ジャパン)への影響は特に発表されていません。

ドラッジ・レポートは全米のメディアに膨大なアクセスをもたらしている

ドラッジ・レポート(Drudge Report)は、マット・ドラッジ氏と数名のアシスタントという超小規模なチームで運営しているにも関わらず、米国で絶大な影響力を誇っています

その影響力は並みのニュース・アグリゲーターを超えており、特にニュースや政治を扱うメディアにとって、その影響力は無視できないものになっています。

ドラッジ・レポートのイデオロギー(政治的スタンス)は右派~中道右派ですが、ドラッジ・レポートはイデオロギーの異なるメディア…例えばThe New York TimesBloombergThe Washington Postなどにも何百万ものページビュー(アクセス)を送っています

Facebookからのアクセスが圧倒的多数を占める保守系ニュースサイト「Independent Journal Review(IJR)」にとって、ドラッジ・レポートはありがたい存在だと言います

IRJの記事がドラッジ・レポートに取り上げられると、アクセスが急増すると、プログラマティック・セールスと広告運用の責任者であるKatie Steiner氏はDigidayのイベントで語っています。

彼女曰く、「ドラッジはまだFacebookに勝てる」。

なぜDotdash(旧About.com)はバーティカルメディアを細分化したのか?

Web 1.0の象徴的な存在だったAbout.comは、記事の更新・改善と共に、6つのバーティカルサイトに順次分割され、併せて社名をDotdash(ドットダッシュ)に変更しました

DotdashのCEOであるニール・ヴォーゲル氏が、マスリーチのサイトよりも専門的なバーティカルサイトの方が訪問者や広告主に貢献できると考えたからです。

Dotdashはその戦略をさらに推し進め、About.comのリニューアルで生まれた6つのバーティカルサイトのうち、Verywell、The Balance、The Spruceの3つのサイトをさらに分割し、よりテーマを絞ったサイトを作りました。

分割による新サイトは、新規ドメインを使い、既存のコンテンツをリダイレクトして作成されました。

SEOへの影響は?

サイトを分割し、より扱うテーマを特化させると、サイトにどのような変化が起こるのでしょうか?

コンテンツをあるドメインから別のドメインに移動させると、サイトのトラフィック(アクセス)に短期的な混乱が生じます。

Google、Bing、Pinterest、その他のプラットフォームが、新しいドメインを適切に評価するまでには、1週間から3ヶ月ほどかかることがあります。

その間に、ウェブサイトのトラフィックは激減する可能性があります。事実、分析会社SEMrushのデータによると、The Spruceのメインサイトへのトラフィックは、2月の4600万から3月には2000万以下にまで減少しています。

しかし、プラットフォームがサイトを適切に評価すると、サイト分割(ドメイン分割)の結果が出ます。

SEMrushによると、新しいVerywell Fitは、初月の2月に150万人だった訪問者が、5月には590万人になり、Verywellのサイトを合わせたトラフィックが過去最高を更新するほど大きく増加しました。

他のサイトは、もっとゆっくりと成長しています。The Spruceは今月中に以前のトラフィックレベルに戻るペースですが、The Balanceはサイト分割前の水準から少し遅れていると、CEOのヴォーゲル氏は述べています。

ヴォーゲル氏によると、サイトの広告主はこの変化を気にしていなかったといいます。

サイトのジャンル特化はSEOの基本

サイトのコンテンツを専門化する事は、SEOにおいて非常に重要です。

一般的に、ウェブサイトはさまざまなジャンルのコンテンツを扱うより、1つのテーマに特化した専門的なサイトの方がGoogleにおいて高く評価されます。

例えば、思い付いたことをひたすら書いている雑記ブログなどは、SEOにおいて弱い傾向にあります

そのため、複数のテーマを扱っている雑多なウェブサイトは、ドメインを分割し、テーマごとに異なるウェブサイトにした方が、コンテンツは同じでもSEOにおける評価が高くなる可能性があるという事です。

事実、About.comのサイト分割と、その後の細分化はSEOの成功例として高く評価されています

ユーザーや広告主にとっても、自分達が関心のあるテーマだけで作られたサイトの方が便利です。

お金に関する記事を読みたいユーザーにDIYに関する記事をオススメしても意味がありません。

スマホに関する広告を出したい広告主にとって、フィットネスに関する記事の横に広告が表示されるのは広告費の無駄です。

サイトのテーマを特化する事は、ユーザーの体験、広告主のビジネス、検索エンジンからの評価(SEO)、あらゆる面において良い効果が得られるという事です。

まとめ

日本では今(2024年)でも、Yahoo! JAPANが圧倒的な強さを持っていますが、今後は日本の大手メディアの間でも、扱う情報を絞った専門的なサイトが評価されるようになるかもしれません。

サイトのテーマを絞るというのは、アフィリエイターの間では常識でしたが、ブロガーやYouTuber、メディアの間ではまだあまりその重要性が知られていないかもしれません。

皆さんも、何かメディアを作りたいと思っているのなら、About.com改めDotdashの成功事例を参考にしてみてはいかがでしょうか?

BuzzFeed Newsの凋落

(2023年12月18日)

2006年の創設以来、SNS時代のデジタルメディアとして絶対的な地位を築いてきたBuzzFeedですが、本国であるアメリカでは株価の暴落により、ナスダック市場から上場廃止される危機に瀕しており、その上、現金が底をつく懸念まであります。

そんなBuzzFeedの凋落を端的に示しているのが同社のニュース報道部門である「BuzzFeed News」です。

BuzzFeedはエンタメネタや動物ニュース、あるあるネタなど、TwitterやFacebookでシェアされる”軽いネタ”を扱っているメディアですが、アメリカでは以前より本格的な報道分野に力を入れていました。

2011年に政治専門メディア・ポリティコ(Politico)出身のベン・スミス氏起用し、2016年にはニュースとエンタメを分離し「BuzzFeed News」というブランドを創設、さらに2018年には専用のサイト「BuzzFeed News(buzzfeednews.com)」を立ち上げ、2021年には国際報道部門でピューリッツァー賞を受賞しました。

BuzzFeedはわずか10年でおもしろ画像を紹介するバイラルメディアから、世界有数の報道機関を有するまでに成長したのです。

しかし、その努力は報われませんでした。

ニュースはその性質上、広告主に避けられる傾向があります。BuzzFeed Newsも例外ではなく、その評判とは裏腹に収益化が難航しました。

BuzzFeedは何度も解雇を行うも利益は出せず、最終的にBuzzFeed Newsは2023年4月20日に行われた同社の人員整理と合わせ、閉鎖されました

フェミニズム系ニュースサイトの米Jezebel、閉鎖後に買収が決定

Gawker Media(現G/O Media)が2007年にスタートしたメディアで、伝統的な女性誌に対して、より現代の女性に寄り添ったメディアとして人気を集めたフェミニズム系ニュースサイト「Jezebel(イザベル)」は、2023年11月に閉鎖され、スタッフ全員を解雇しました。

フェミニズム系メディアである同サイトは、性交や中絶に関する話題を扱っているため、広告主に避けられたことが原因では?とのこと。

その後、同月末にPaste Magazineが同サイトを買収しました

Pasteの創刊編集長であり、同社の社長でもあるジョシュ・ジャクソン氏は、「(Jezebelが)閉鎖されたと知ったとき、私は復活を助ける為にこの機会に飛びついた」とBBCに語っています

また、この買収に際しては、同じくG/O Mediaが所有するSplinter Newsも共に買収されています。

Quartzを米Gizmodo等を運営するG/O Mediaが買収

(2022年4月22日)

国際的なビジネスニュースに焦点を当てたデジタルメディア・Quartzが、米Gizmodoや米Kotakuなどを運営するG/O Mediaに買収されたことを、Quartzの共同創業者で現CEOのZach Seward氏が、2022年4月22日に発表しました

G/O Media社とQuartz社の代表者は、買収の金銭的条件の公表を避けましたが、買収価格は1000万ドル以下とみられています

Seward氏は、「Quartzの先進的なビジネスジャーナリズムと世界経済に関する重要な報道は、G/O Mediaのネットワークに加わることで、さらに多くの人々に届くようになります。」「特に、買収に伴うレイオフがないこと、また統合後も予定されていないことを誇りに思います。これは長期的な成長のための計画です。」と述べています

Seward氏によれば、100人の従業員のうち80人(50人のジャーナリストを含む)が、「売却益から総額100万ドル以上の取引ボーナスを受け取る資格がある」との事です

なお、Seward氏は編集長兼ジェネラルマネージャーとしてQuartzに留まります。

Quartz、復活なるか?

Seward氏は、1月から今回の買収についてG/O Mediaと話し合ってきたと語っています。

氏は「2020年にQuartzを非公開にした後、われわれは資金を調達し、独自に運営することを模索していた」「売却は計画外でしたが、今年の初めにG/Oと話を始めた時に、Quartz、そして皆さんにとって非常に最良の道となりました」と述べています

ニューヨーク・タイムズによると、Quartzは2021年には約690万ドルの損失を出しており、G/O Mediaとの契約以前は、2023年まで収支が合うことはないとみられていました。

Quartzの2021年の収益は1110万ドルで、前年の1230万ドルから減少しており、Reutersは「収益の落ち込みは、メディア企業が手を組むか、新しい豪華なオーナーを見つけるよう圧力をかけている。」と記しています

また、フロリダ州セントピーターズバーグにある非営利のジャーナリズムのための学校であるポインターメディア研究所は、「今回の買収は、全米に展開するデジタル新興企業の統合トレンドに合致している」と記しています

参考:Quartz sells to G/O Media

ネットメディアバブル崩壊。業界はこれからどこへ向かうのか?

BuzzFeed、Vice、Gawker、Drudge Reportといったデジタルメディアは、トラフィック戦争の犠牲者だが、メディアの状況を揺るがすことに成功したと英国のメディアであるThe Guardianが論じています。

The digital media bubble has burst. Where does the industry go from here?

※記事中の為替レートは当時のニュースに記載された額を参考にしています。

米国の著名なジャーナリストであり、New York TimesやBuzzFeedで働いた経験のあるベン・スミス氏は、著書「Traffic」の巻末で、BuzzFeed Newsの失敗は「ユートピア的イデオロギー、一種の魔術的思考」の結果だと書いている。

10年間、ベンチャーキャピタルからの暖かい資金を浴びながら、価格設定や流通を完全にコントロールすることができなかったデジタルベースのビジネスにとって、これほど真実味のある言葉はないだろう。

2021年に国際報道部門でピューリッツァー賞を受賞したインターネット・ニュース・ビジネスのパイオニア、BuzzFeed Newsは、同社株式が上場以来90%も暴落したことを受け、4月20日にニュースルームを閉鎖すると発表した

BuzzFeedのジョナ・ペレッティ最高経営責任者(CEO)は、「もはや資金を提供し続けることはできない」と述べた。

しかし、これはデジタルメディア部門を襲った悪いニュースの一つに過ぎない。

2017年に時価総額が57億ドル(約6,300億円)に達していた、この時代のもうひとつのパイオニアであるVice Newsは、身売りを目指してニュース事業を再編成し、人員を削減すると2023年5月15日に発表しました

その後、Vice Mediaは投資ファンドであるフォートレス・インベストメント・グループがソロス・ファンド・マネジメントやモンローキャピタルなどの投資家グループを率いて3.5億ドルで買収することが決まりました

ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、会社を清算から救うことになるこの買収は、プライベート・エクイティ会社TPGグループ、シックス・ストリート・パートナーズ、メディア王ジェームズ・マードックなどの支援者を含む、Viceのほぼすべての株主を一掃することになると報じている。

トラフィック戦争による犠牲者は他にもいます。

ドラッジ・レポートに続く、ブログから出版への革命を2000年代初頭に起こしたと言えるGawkerは、短期間の再出発の後、今年初めに再び閉鎖しました。

また、Gawkerが2007年にスタートしたメディアで、伝統的な女性誌に対して、より現代の女性に寄り添ったメディアとして人気を集めたJezebel(イザベル)は、2023年11月に閉鎖され、スタッフ全員を解雇しました。その後、同月末にPaster Magazineが同サイトを買収しました

そして、ディズニーの新たなレイオフが、ネイト・シルバーのデータ主導の政治とジャーナリズムのブランド、FiveThirtyEightを襲った。シルバーはFiveThirtyEightの従業員に対し、”近いうちに “このサイトを去ることになるだろうと語った。

Insiderもチームの10%をレイオフし、さらに名前をInsiderからBusiness Insiderに戻すと発表しました

反乱的なニュース・ビジネスの破滅の種が最初に撒かれた場所をたどるのは、やりきれない作業だ。ほとんどのサイトは、バイラルな力によって推進される多くの訪問者に依存しており、その訪問者はデータを収集し、デジタル広告主に販売することができた。

しかし、この広告モデルには深い欠陥があり、特に、トラフィックの主要な配信ネットワークであるインターネット大手のGoogleとFacebookが、いつでもコード(アルゴリズム)を変更することができ、インターネットニュースの顧客を別の場所に送ることができた場合、ウェブサイトへの訪問者の流れが途絶える可能性があった。

コロンビア大学デジタル・ジャーナリズム・センターのエミリー・ベル所長は「ソーシャル・プラットフォームは、一般的に言って、ビジネスを構築できる場所ではない」と言う。

BuzzFeedのように、ソーシャル・プラットフォーム上で広告主の支援を受けてビジネスを構築していた企業は、すぐにそれを失っていることに気づいた。「彼らは、あなたのトラフィックがどこから来て、いくら支払っているのかが正確にわかるので、あなたのお金とトラフィックを奪おうとしているのです」とベルは指摘する。

しかし、ある瞬間、BuzzFeedは大打撃を受けた。マットレスのように見える25人の有名人という、ユーモラスで無関係なリスト記事のパイオニアから、画期的な大調査とピューリッツァー賞の受賞に至ったのだ。

また、たとえ物議を醸すような状況であっても、ニュースサイクルを支配することができた。悪名高いロシアの選挙干渉「スティール文書」を公表したのは、スミスのBuzzFeedだった。

Viceでは、ストーリーは明らかに異なり、より奇妙で、ジェットコースターのようだった。

BuzzFeed同様、プライベート・エクイティ企業から投資を受けたが、A+Eネットワークスや21世紀フォックスからも投資を受けた。

BuzzFeedとViceがそれぞれの意味でその時代を象徴していたのだとしたら、彼らもまた戻ることはないだろう。彼らが追い求めた夢は、他の何百ものインターネット・ベースの企業と同様、超低金利と投機的投資の機能であった。

新興デジタルメディアがもたらしたもの

BuzzFeed NewsやVice Mediaの反乱は、メディアの展望を揺るがすという目的を達成したかもしれない。

そうすることで、より焦点が絞られ、多くの場合有料ウォールの背後にある、独創的で小規模なニュース事業が形成される機会が生まれた。

その中で最も成功しているのは、Politico、Axios、Puck、Airmail、Talking Points Memoなどである。

しかし、必ずしもそうではない。

ViceやBuzzFeedが残した最大の遺産は、既存のメディアブランドに近代化を迫ったことだとベルは言う。

BBC、ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポストなど、かつては堅苦しかったブランドが、デジタルニュースとそれに伴うデジタル収入を完全に受け入れた。多くの場合、デジタル・ライバルの出身者の多くを採用することで、そうしてきた。

そして、伝統的なメディアはデジタル化しないだろうという考えは、全く正しくないことが判明した。