Thiel Fellowship(ティール・フェローシップ)

Thiel Fellowship(ティール・フェローシップ)とは、起業家のピーター・ティール氏が自身の財団を通して行っている、22歳以下の若者に起業支援として最高10万ドルを提供するプロジェクトです。

ティール氏は、米国の学費が高騰し、多くの子供たちが、偉大なことを成し遂げることだけに集中するのではなく、借金(奨学金)の心配をしながら卒業していく現状を、このプロジェクトを通して変えたいと考えています。

Thiel Fellowshipは、2010年9月28日に、サンフランシスコで開催されたカンファレンス「TechCrunch Disrupt」で行われたディスカッションにおいて、ティール氏が自ら発表しました

出身者

Thiel Fellowshipは、創設13年でこれまでに271人の対象者を輩出しており、奨学金を受け取った人のうち11人が、後にユニコーン企業となるスタートアップを起業しました(2024年時点)。

Newsweek によると、2016年にThiel Fellowshipに寄せられた6,000件の申請のうち、4分の3は、ハーバード大学、マサチューセッツ工科大学(MIT)、イェール大学、スタンフォード大学など、一流校と呼ばれる学校からのものでした。

また、2024年にはAIを用いた人材マッチングサービス「Mercor(メルコア)」を2023年に創業したブレンダン・フーディ氏、スリヤ・ミダ氏、アダーシュ・ヒレマス氏の3人がThiel Fellowshipに選ばれました

2024年初頭、人工降雨のスタートアップであるRainmaker Technology Corporation(レインメーカー・テクノロジー・コーポレーション)を創業したオーガスタス・ドリコ氏がFellowshipに選ばれました。

ヴィタリック・ブテリン(イーサリアム)

Thiel Fellowship出身者の中でも特に著名なのがヴィタリック・ブテリン氏です。

ブテリン氏はブロックチェーンプラットフォームの「Ethereum(イーサリアム)」を発明した人物です。

ビットコインマガジンの共同創設者であり、ダークウォレットやクリプトキットの開発にも携わっているブテリン氏は、2014年1月にイーサリアムの構想を発表しました

同年6月、当時20歳の大学生であった彼は、Thiel Fellowshipに選ばれ、今後2年間で10万ドルを受け取る事を条件に大学を中退し、イーサリアムの開発を本格化させました。2015年にイーサリアムのプロジェクトが開始されました

ルーシー・グオ(Scale AI)

カーネギーメロン大学でコンピューターサイエンスを専攻していた彼女は、2014年にThiel Fellowshipに選ばれたため大学を中退し、Facebookでインターンとして働きました。その後、Snapchatに入社し、同社初の女性デザイナーとして働きました

Quoraで働いていた際に出会ったアレクサンダー・ワン氏(似た名前のファッション・ブランドとは無関係)と出会い、2016年に2人でScale AIを共同設立しました。その後、同社をクビになりますが、株を5%保有していたことから、2025年5月にテイラー・スウィフト氏に代わり、史上最年少の自力で富を築いた女性億万長者となった。

今年5月には、30歳にして歌手のテイラー・スウィフトを抜き、「世界最年少で、自力で資産を築いた女性ビリオネア」となった。総資産は13億ドル(日本円で約1948億円)。

出典:総資産1948億、世界最年少「自力で」億万長者になった女性…ルーシー・グオとは何者か?|ニューズウィーク

なお、Scale AIにはティール氏が創業したベンチャーキャピタルであるFounders Fundが2019年に1億ドル出資しています。

ディラン・フィールド(Figma)

ソフトウェアデザインスタートアップの「Figma」を創業したディラン・フィールド氏もフェローシップで選ばれた一人です。

フィールド氏は無人航空機(UAV)またはドローン向けのソフトウェアを開発する為に2011年12月31日にフェローシップに応募しました。

しかし、応募から数週間後にエヴァン・ウォレス氏(Evan Wallace。共同創業者となるはずだった知人。後にFigmaを共同創業する。)がドローン関連ビジネスに懸念を示し、「ドローン分野に参入すべきでない」と述べたため断念。

2012年にブラウン大学を中退してウォレス氏と共にFigmaを創業。

参考:LIST: Tech Power-Players Who Are Alumni of Peter Thiel’s Fellowship – Business Insider