(この記事は2015年4月7日の情報を元に書いています。)
米国の政治系ニュース・アグリゲーターである「ドラッジ・レポート」は、マット・ドラッジ氏とそのアシスタントという極少人数で運営しているにも関わらず、米国で絶大な影響力を誇っています。
当記事では、米メディアのDigidayから、ドラッジ・レポートが主流メディアにどれだけの影響力を誇っているのか解説します。
参考:Publishers’ love-hate relationship with Drudge Report – Digiday
主流メディアに何百万ものアクセスを送るドラッジ・レポート
Google NewsやSmartNewsなど、多機能なニュース・アグリゲーターが登場する中で、ドラッジ・レポートは(基本的に)マット・ドラッジ氏がピックアップした注目の記事へのリンクをトップページに載せただけのシンプルなウェブサイトです。
しかし、そんなWeb 1.0のニュース・アグリゲーターであるドラッジ・レポートは、現在でも米国の著名なメディアに対し絶大な影響力を誇っており、The New York Times、Bloomberg、The Washington Postなどの大手ニュースサイトに何百万ものページビュー(アクセス)を送っています。
控えめに言っても、これは不安な状況です。
隠遁生活を送るマット・ドラッジ氏が1996年に設立したこのサイトは、1998年にニューズウィーク誌が、当時ホワイトハウスのインターンであったモニカ・ルインスキー氏とクリントン大統領(当時)との不適切な関係(クリントン=ルインスキー・スキャンダル)についての情報を握っていることを報じたことで一気に有名になりました。
ドラッジ氏は、感謝祭で飲み過ぎて人を不愉快にするようなことを言う、口うるさい右翼のおじさんのような存在であり、そのためか、The New York Times、Bloomberg、The Washington Postなどのメディアは、ドラッジ・レポートから得られるアクセスについて回答しなかったり、コメントを拒否したりしています。
メディアの間では、イデオロギー(政治的スタンス)の異なるメディアに対してもドラッジ・レポートがいまだに大量のアクセスを提供していることは、汚い秘密となっています。
一方、Facebookからのアクセスが圧倒的多数を占める保守系ニュースサイト「Independent Journal Review(IJR)」にとって、ドラッジ・レポートはありがたい存在だと言います。
IRJの記事がドラッジ・レポートに取り上げられると、アクセスが急増すると、プログラマティック・セールスと広告運用の責任者であるKatie Steiner氏はDigidayのイベントで語っています。彼女曰く、「ドラッジはまだFacebookに勝てる」。
メディアのアクセス元
アクセス解析ソフト等を提供する「Parse.ly」のデータによると、Facebookからのアクセスが急増しているにもかかわらず、過去数年間、ドラッジ・レポートはメディアにとっての第7位のアクセス元として安定しています。
(1月と2月。単位:%)
現在、ドラッジ・レポートは、Pinterest(0.75%)やLinkedIn(0.21%)を上回り、CNN、ABC、Foxなどのニュースサイトのドメイン数上位100を集めた「ニュースサイト」カテゴリーにわずかに及ばない程度です。
Parse.lyのマーケティングディレクターであるクレア・カー氏はこう言います。「記事の量という点では、ドラッジ・レポートの1ページでは、Facebookと同量の記事をカバーする事は不可能でしょう。しかし、簡単な調査によると、ドラッジ・レポートに掲載された特定の記事に関して言えば、ドラッジ・レポートからのアクセスは、Facebook を含む他のサイトのそれを凌駕することがわかります。データに示されているように、これは全体で見ても強力なアクセス元であることを意味します。…ただ、Facebookに対抗できるものではありません。」。
ニュースメディアにドラッジ・レポートがもたらす圧倒的なアクセス
ドラッジ・レポートの広告販売会社であるインターマーケッツのために引き出されたSimilarWebのデータによると、ニュースや政治関係のメディアは、ドラッジ・レポートからのアクセスが他のジャンルと比べてとても多いことが分かります。
(単位:%)
ドラッジ・レポートからのアクセスは、諸刃の剣でもあります。
メディアの幹部がよく口にするのは、予見しにくい急上昇の形でやってくるため、GoogleやFacebookとは異なり、最適化が難しいということです。アクセスは短期的なものなので、サイトに訪れた読者を持続的な(価値のある)読者にするのは難しく、またコメント欄を汚染するような有害な発言もしばしば見受けられます。簡単に言えば、”ドラッジ戦略”は難しいということです。
シカゴ・サンタイムズ紙は、昨年、ある犯罪記事へのコメント欄で、ドラッジ・レポートからやってきたユーザーが手に負えなくなったため、コメント欄を一時的に閉鎖しました。
シカゴ・サンタイムズ紙の編集長であるCraig Newman氏は、「ドラッジ・レポートからのアクセスは、通常の読者層以外からの偏ったアクセスにより何が起こるかを示す例です」「非常に短い期間の突発的なアクセス上昇です。予測不可能な性質のもので、計画することはできません」と述べています。
まとめ
一個人のニュース紹介サイトから始まったドラッジ・レポートですが、その影響力は並みのニュース・アグリゲーターを超えている事か良く分かりますね。
特にニュースや政治を扱うメディアにとって、その影響力は無視できないものになっているようです。
そんなドラッジ・レポートのサイトはこちら:DRUDGE REPORT
*この記事は2015年4月7日に公開された米メディア・Digidayの記事「Publishers’ love-hate relationship with Drudge Report」を参考に書かれています。現在の情報とは異なる場合があるのでご注意ください。